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「お姉さん」に服を着せて、うっとりするほど着飾るのは宣伝のためで、誰かがいつも仕事でやっていることだ。  ――夢じゃないのも、夢がないのも。  一人で楽しんでいた間に何がどうなるわけでもなく、理解していたはず、だった。ただ、ガラス越しにあった現実から、急に手が伸ばされたようで驚いたのだ。  そこで、あ、と気づいた。いくらなんでも、あの態度はないんじゃないか、と。  完全に逃走だった。わき目も振らず走ったのだから。  気まずい気持ちを抱えつつも、足が遠ざかるのは止められなくて、次の日の朝はまっすぐバス停へ向かってしまった。  ――逃げた。 自分で自分のしたことに、学校に着いてから俯いてしまう。 「ちょっと~暗いよ、栞里。さては模試の結果が相当悪かったね?」 「……悪かった、ンだけど……」  さらなる事実を那美から突き付けられた。ああ、と思い出して遠い目になった。確かに、休み前に貰った結果は、芳しくなかった。  落ち込む理由が二つになって、ぐったりと、机に突っ伏してしまう。 「おーい、大丈夫?」 「……う、ん」 「あのさ、気に病みすぎんのも、良くないよ? まだ本番じゃないんだし」  珍しく励ます方向にシフトした那美に、うん、と頷く。ばしばしと叩いてくれる手が、痛かったけれど嬉しかった。
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