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 からんからん、とベルが鳴って、男の人がちょうど出てきた。はっとして、とっさに振り返って叫んでいた。 「お店無くなっちゃうんですか!?」 「……あ、……」  驚いたように一歩下がった相手に、栞里も我に返った。見ず知らずの人にいきなり、と勝手に顔が赤くなる。慌てて、すみません! というよりも早く。 「無くならないよ」 「……え?」 「無くなったりしない。これ、よく見て」  張り紙を躊躇いなく剥がして、相手が栞里の前に差し出した。いいんだろうか、と戸惑いつつも、今度こそちゃんと目を通す。  やっぱり全然頭に入ってこなくて、指でゆっくりなぞりながら。 「……改装のため……休業」 「そう。再オープンの日にちも、決まってるから」  指摘の通り、二月の日にちが書いてあった。奇しくも、栞里の目指す大学の試験日と、同じ日付。  見上げた先にいたのは、まだ若い、けれど大人の男の人だった。多分、店員さんなのだろう。見たことがある気がしたから。  穏やかで優しそうだった。だからか、じゃあ、と小さな呟きがこぼれたのは、ほとんど無意識だった。 今は冬。けれど時間が巡って、時が過ぎれば。 春に、なったら。 「さくらが、咲いたら……また、来ます」     
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