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バレー部のエースだった那美は、推薦も狙える枠にいながら、手堅く国公立を目指している。とりあえず好きそうな資格が取れるという理由で、そこそこ近い私立文系を狙っている栞里とは大違いだ。それでも、少し高めにある大学だから、自分だって真面目に勉強しないといけないのは変わらない。
のだけど。
「声はハスキーで面倒見のいい、素敵なお姉さんなのに……」
「お願いだから現実見て? あんたの空想癖は今に始まったことじゃないけど、いい加減友達止めるよ?」
「えーー」
ちょっとくらいいーじゃん、と机に突っ伏しながら、一応抗議した。染めもしない――そんな無謀さは栞里にない――ただドライヤーで乾かしただけで、結びもしない髪の毛が顔にかかる。少し茶色っぽくてゆるく癖があるのは悩みの種だった。那美みたいな、真っ黒でストレートなボブにはあこがれる。
「十分付き合ってくれればいいから」
「やってられないし。だったら単語帳開きなよ」
「キビシイっ」
「あんたのためよ!」
「おっしゃるとーり!」
なので大人しく栞里は従うことにした。本当に十分も話す気はない。ため息をつきつつ、現実逃避が入っているのも自覚している。
英単語を出し合いっこしていたら、あっという間に一時間目のチャイムが鳴った。
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