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そのお店は、栞里の家からバス停までに歩く道のりを、少し遠回りすると出会える場所にある。
主にレディスファッションを扱う、内装は木目のニスがきれいなお店だ。最近はメンズ向けらしいシャツやジーンズも見かけるようになって、「お姉さん」の横に男性型のマネキンが立つこともある。そんな時には、デートコーデかな、なんて考えたりする。
中学生になって英語を習うようになってから、辞書を引いて店名は読めるようになっていた。
『FORTUNATE』
幸せな、とか、幸運をもたらす、という意味だ。栞里にとっては、まさしくその通り。
それまでは用事のある時なんかに、時々見に行く程度だったけれど、高校に入ってからは通学路として、ほぼ毎日「お姉さん」に朝の挨拶をしてから学校に行き、塾のない日の夕方にはちょっとおしゃべりしてから帰ることにしていた。
こんな癖がついたのは、那美曰く、例の空想癖の賜物だ。
昔から、ぼうっとしている子供だったらしい。今でも考え込む事が多く、しかも何を考えていたのか、別の事に気を取られると忘れてしまうのだ。
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