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 ――普段の服より、ゼロが一個、春物のコートに至っては二個ほど多かった。お年玉をはたいたって手が出ない。  ただもう、ここまでくると、日課に近い。次の日、綺麗な格好に戻って立っていた時には、同じようにいそいそと自動的に近づいていた。  今日もまた、足は勝手に遅くなる。朝のコートは文句なしにカッコ良かった。このお店の服は、キレイめ系で栞里の服とは少し違う。憧れはあっても、実際に着るのは躊躇う服が多い。色合いも、モノトーンのはっきりしたものや、パッと目を引く紫なんかが大胆に取り入れられていた。  それでも、ここ一年くらいは流行りが変わったのか、お姉さんの趣味の問題なのか――これはあくまでも比喩表現だけれど――なんとなく以前とは違う感じがしていた。  そして今日。  目に飛び込んできたのは。  すっきりしたニットのオフホワイトシャツに、上は濃茶のダッフルコート、下は朱鷺色の小花の散ったフレアスカート。いつもとはかなり趣が異なる可愛い感じのコーディネートだ。  もちろん、とてもよく似合っている。  お姉さんはいつだって直立不動ではなく、澄ました感じで鞄や小物を手にしていることが多い。今日はなんだか、首の角度のおかげで目が合った。     
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