帰郷

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 そんなことがあってたまるかと、否定したい気持ちが勝るが、これが夢でないのならば認めなければならない。  認めるためにも現状を把握しておきたい。何が起きても振り回されないように。  ユウリはまだ答えを貰っていなかった問い掛けを、再びアナンに向けた。 「それで? 俺の兄という、皇帝陛下に何があった?」  単刀直入に問えば、アナンたちは両膝を着いて上半身ごと床に平伏した。一見滑稽な図だが、それだけ事態が切迫していると伝わってきた。  ――だからって、頭下げればいいってもんじゃないと思うんだけどな。  皇帝の弟だとしても、元来ユウリは頭を下げられる立場にはない。自分よりいくらも年上の、位の高そうな者たちに頭を下げられても戸惑うだけで、そんな動作よりも早く説明して欲しいのが本音だ。 「申し訳ありません。陛下をお守りすることができませんでした」  ――話にならないじゃん。  ユウリはなかなか本題に入らない現状に、いい加減飽き飽きしていた。言いたくない気持ちはわからないでもないが、ちゃんと質問の答えを返してもらいたい。  仕方なくユウリは目を閉じ、僅かに感じる風に問いかけた。  ――彼らは何を隠している? 『龍神様が怒ってる』 『南国が怒らせた」 『レイリは説得した』 『西国を守ろうとした』  与えられた情報を繋ぎ合わせるのは困難で、ユウリは目を眇め未だ平伏したままのアナンを見た。風から教えられた中で、確認すべき事項がある。 「南国の状況は?」 「……ふた月ほど前から雲が覆い、雷雨に見舞われております」 「最後に日が出たのは」 「やはり、ふた月ほど前になります」  となれば農作物は全滅だろう。雨によって増水した川が氾濫し、地盤が緩み山は土砂災害を引き起こす。シユウが教えてくれた言い伝え通りの状況になっていると考えていい。  南国が何かしらの事情で、龍神を怒らせた。  そして西国に助けを求めた。
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