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情報管理は徹底している。
だが今は二国でだけでも、いずれは他の二国にも影響が及ぶ可能性だって考えられる。未だレイリが目を覚まさないのも、龍神のせいかもしれない。
ユウリは占術師が言ったという予言を、心の中で繰り返した。
『双子が共にいれば災いがふりかかり、西国は滅びるであろう』
「そういうことか」
呟きを聞き咎めたアナンが眉を寄せた。
ユウリは予言を譜んじ、ふっと小さく笑った。喜びとは違う、自嘲混じりの笑みを。
「俺が西国にいたら、きっと一緒になって暗殺されていた。そうして西国は頭を失い、南国と共倒れになる。どこかに支配されたとしても、事実上西国はなくなる」
「ユウリ様……」
――で、俺が戻って来ても何かしなきゃ結局国は滅びてしまう。これが、最初から定められた運命なのか?
ただの民間人だと思っていた自分が西国皇帝の弟で、今この国の命運を掛けられている。
アナンも、平伏していた武官たちも、縋るようにユウリを見る。レイリが倒れ、彼らなりに尽力した。救い手が現れると言われでも、半信半疑だったに違いない。
ユウリは視線を振り払い、沈黙を貫いた。
挑むまでもなく、無理だと決め込んでしまう。相手が大きすぎるのだ。南国にしろ、龍神にしろ。ユウリ一人でどうこうできる問題ではないのは、火を見るより明らかだ。
「お疲れでしょうに、気が利かず申し訳ありません。部屋を用意させますので、今日はそちらでお休みください」
アナンのわざとらしい気遣いに心苦しきを覚えながら、好意に甘えることにした。
武官たちにも、明らかに落胆が浮かんでいる。いざ答えを出す時になって怖くて逃げてしまう自分が情けなくて、ユウリは拳を握り唇を噛み締めた。
再びマントをはおり、二人の武官に固まれユウリは城の奥へと案内された。幾度か角を曲がり、辿り着いたところは元の世界で暮らしていた部屋の何倍も広く、豪者な造りをしていた。逃げるように部屋に入り、ユウリはふらふらと寝台に寄り倒れ込む。
思ったよりも堅い台で寝転がり、胸元のお守りを指でいじると溜息を吐き出した。
気丈に振舞っていても、本当は不安でたまらなかった。
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