第一話

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 発見者はジョギング中の専門学生だった。  彼は今パトカーの中で機動捜査隊員に発見当初の様子を話している。  ツイードコートのポケットに手を入れたままウィンドウを覗き込んでいた雅季は、ガサガサと音がし、近づく人の気配に上体を起こした。  鑑識の平井安里(ひらい あんり)が「おはようございます」と雅季の隣で、ラテックスの手袋をした手を擦り合わせた。  白い息が青い空気に滲む。 「どうでしょう。何かわかりましたか」 「機捜もきたばかりですし、初動も初動ですから。いや、でも必ず手がかりは見つけますよ」  雅季は頷いた。つい先ほど、このテナントの所有者に連絡がつき、鍵を開けてもらったばかりである。正面入り口のガラス戸や錠には特に目立って不審なところはなかった。雅季は平井について裏口から入ることにした。  まだ薄く雪が残る建物と建物の間のアスファルトの道は、やっと人ひとり通れるくらいだ。 「ああ、裏口のドアの錠周りに傷がありました。レンチのような物でこじ開けたのでしょう」  事務所内に入る前に、平井から靴カバーを渡され、ブーツに被せた。    ポケットから白手袋を出して装着する。 中は薄暗い。     
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