プロローグ

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「あ、大丈夫。もうちゃんと許可もらってある。ていうか、その方があの人にとって都合いいんだよね。そうだ、家賃を振り込んでおくから口座教えてって」 「は?」 「丞くん、もう耳が遠くなったの? ちょっとの間、ここにいさせてくださいってこと。彼女いないなら、大丈夫だよね。いやあ、よかったよかった」  久賀は思わずマグカップの取っ手を握った。  もうすっかり冷めてしまったのが残念だ。いや、冷たい方が相手に火傷を負わせる心配はない。 「丞くん、お茶まだ入ってる? あたし疲れちゃったから寝るけど、入れなおして来てあげるよ。お世話になるんだからね、それくらいさせてください。あ、寝る場所このソファで十分だから。大きいし座り心地抜群だし……いたっ!」  ごろん、とソファの上で身体を伸ばした晴美の脚に、久賀が指鉄砲で飛ばした髪ゴムが命中した。 「痛いじゃない! そんな子供みたいなこと……」 「子供はどっちだ。まず俺にわかるようにちゃんと話してもらおうか。納得しないうちは絶対に寝かせないからな」 「やん、『寝かせない』とか丞くん、それヤバいから。一応、あたし年頃の娘だし」  ――そんなことを言えるのが子供なんだよ。 久賀は長い息を吐くと、立ち上がってバスルームに行った。話を聞く前に頭痛薬を飲んでおこうと思った。 
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