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第四話
「なぜ心臓なんでしょうね……」
久賀はペットボトルのウーロン茶を一口飲み、呟いた。
病院の駐車場に停めた車中で、二人は青鞍が用意した昼食を食べていた。
やっとエアコンが効きだし、冷えきっていた車内が暖かくなる。
「犯人はそれをどうしたんでしょう。自宅に保管しているのでしょうか」
運転席の雅季から封を開けた卵サンドが差し出される。久賀は「どうも」と一切れ取った。
『おにぎりとサンドイッチ、久賀さん、どちらにしますか』
いくら久賀が年下で現場経験が少ないとはいえ、検事の方が立場は上という意識が警察にはあるようだ。
雅季は先に自分に選ばせようとした。
それを久賀が『半分ずつにしよう』、と提案したのだった。
おにぎりは、鮭と高菜とチーズおかかだった。
遠慮しながらも雅季は高菜を取った。
それにしてもこのセレクト。青鞍はベジタリアンか?
「そうですね。女の意見だと、笑われるかもしれませんが……心臓つまりハート、ですよね。犯人は彼女のハートを手に入れた、ってどうしても考えてしまいます。やはり、愛憎が絡んでいると考えるのは短絡的でしょうか」
久賀が横目を流すと、雅季は思案げにフロントグラスを見ながら、指に摘んだサンドイッチを口に運んでいた。
あの遺体を見た後に食事が出来るのは、刑事として長年培われた技能のひとつだろうと久賀は思った。
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