第二章「時の流れと空の色」

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ソラが目指していたのも宇宙船の材質研究や機体開発の分野であるが、そこは人気があり倍率が高い狭き門であった。 充電式の無骨な黒いスクーターにまたがり、澄んだ青空を見ながら学園に迎う。 佐渡は学園都市と名前はついてはいるが、学園部とそれに併設するシャトル発射場や研究施設群と郊外の学生寮以外はノスタルジックな田園風景が広がる。 海風が心地よく、空には少なくはなったがカモメが飛んでいる。 大気汚染を始めとする自然環境の悪化は、大陸を超えた国からもやってくる。 海辺の針葉樹林も酸性雨の関係で赤茶けた色になっている。 そんな風景を見ると、最新式の科学技術の集まる場所なのに、たまに信じられなくなる時を感じる。 通学のバイクがこの時間帯になるとかなり多くなる。 遙か彼方に一際存在感のある、ロケット発射台からは実際に技術者が何名か宇宙へ飛んでいるのだ。 田園風景とミスマッチな、建造物を見ながらやがて乳白色で統一した学園が見えてきた。 『遠野―――っ!』  後方から見慣れた声が聞こえる。 ソラはスクーターの速度を緩める、ソラと同じ形のスクーターに乗ったヘルメットから綺麗な茶色の髪を覗かせる、褐色の肌の生徒が後方から追いつき、ソラの肩を叩く。 学園入学時に席が近くで、それから腐れ縁である手塚晋一(てづかしんいち)だった。     
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