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「いえ、おれは坊主はやりません。あそこは従弟が継ぎます」 「やっぱり(あき)()君が。ウチでルイガノのクロスバイクを買ってくれたんだ」 「アイツもMTBにすりゃいいのに」 「通学に使うには充分だべ。でも、悠輝ちゃんと違って、入学式前に買ってただ」   懐かしそうに安藤が笑う。 「おれは色々ありましたからね。買ったのは今頃でしたか……」 「そうだねぇ、ジャイアントが翌年のラインナップに切り替わっていたから、十一月になっていたかな」 「あ、それで、その自転車の整備をお願いしたいんですけど」 「えッ、アレまだあんのッ?」  悠輝は店先が見えるように身体をずらした。 「クワーッ、懐かしいなやッ」  安藤は表に出て、ROCKを店内に入れた。 「十年以上前の型だからねぇ」 「もう、乗れませんか?」  安藤は食い入るように顔を近づけてチェックする。 「いや、大丈夫だべ。時間はかかるけど」 「よかった、またコイツに乗れる……」  悠輝は改めて店内を見回した。並んでいるバイクは当然だが当時とは違う。十年前はもっとMTBがあったと思うが、今はロードやクロスが中心だ。  それでもこの自転車店に入ると、戌亥寺の山門をくぐった時よりも、郡山に帰ってきたと実感出来た。
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