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二人のパイロットが機体を立て直そうと懸命になっている時、吉井はある事に気付いた。
油圧が異常に低下していた。
「油圧が……」
吉井は呻いた。
油圧は、航空機を操縦する際の命とも言える、水平尾翼の昇降舵(機首を上げ下げする)や、垂直尾翼の方向舵(機首の向きを変える)を動かす役割をしている。また着陸装置やフラップも油圧を使用する。
「油圧、すべて損失………」
吉井の言葉は宙に浮いたまま、彷徨っているかのようだった。
油圧、オールロス。
それはすなわち、航空機が操縦不能に陥ったことを意味していた。
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