台風の夜

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  居酒屋チェーン店に向かい合わせで6人ぐらい入れそうな個室に職場の同僚であろう4人がにこやかにお酒を酌み交わしていた お酒が入っている自分のグラスを小まめに拭き取り、垂れる水滴でコースターがグラスの底にくっつくのを防ぐ淡瀬鏡子 一緒に飲んでいる同僚の女友達のグラスには薄く口紅が付いているが鏡子のグラスには水滴は勿論、口紅もキレイに拭き取られていた 「失礼しまーす。こちらお下げしてもよろしいでしょうか?」 と、店員が空いた皿を下げていいか聞いてくる 「あ、お願いします」 そう言うと空いた皿を数枚重ね店員が取りやすいように渡し、更に鏡子はスペースが空いたテーブルを小まめにおしぼりで拭く 鏡子の手元にはテーブルを拭く用とグラスを拭く用の二つおしぼりがキレイに揃っていて、そのおしぼりが入っていたビニール袋の上にきちんと折りたたまれた状態でおしぼりが乗せられていた 「鏡子ちゃん、ひょっとして潔癖症?」 「違うわよ」 「じゃ、なんでそんなに汚れてないのにいちいち拭いてるの?」 「こうやってキレイに使ってあげた方がお店の人だってうれしいでしょ、たぶん…」 「オー、マッジメー!」×3 個室にいた3人がパチパチと手を叩きながら鏡子を称える 「別に真面目って程じゃないでしょ、」 グラスの底に軽く手をあてクイッとお酒を一口飲む 「んー色っぽいねぇ、鏡子ちゃんの飲み方って。てかさ何でグラスの底を手で隠すの?」 「これは…グラスを支えるのと底を隠すことで飲んでいる時に自分の口の中を人に見せないためよ。聖だって人の口の中なんて見たくないでしょ?」 そう言いながらグラスに付いた口紅をさりげなく拭き取る鏡子  
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