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「そういえば今日といえば……」
通学路を歩いていると達裄がふと思い浮かぶ。
朝からバレンタイン特集のニュースでチョコの紹介が続く日本であるのだから。
「わかった。バレ――」
「自分で言うから心の準備をさせて!」
妹に嫉妬ばかりしてられません!
バレンタインで1番にチョコレートを渡すのは彼女の特権です。
催促されればハードルは上がる。
達裄はまだバレンタインって口にしていません、きっと『バレーボール』って言おうとしたに違いありません。
「すぅー……、はぁー……」
心を落ち着けます。
「達裄君、バレンタインのチョコだよ!」
では、達裄にチョコを……ん?
「す、ススキさん!?」
「やっほー、おはよう達裄君に揚羽ちゃん」
寒い気温の中自転車で現れたのは達裄の所属する部活のマネージャーです。
1つ上の先輩でポニーテールで髪をまとめている白崎ススキ。
「私はまだ振られてない。ただ達裄君が揚羽ちゃんを選んだだけで私はまだ諦めてないから」
未練がましく後輩に付きまとうススキさん。
こっちの達裄は何人かの女の子に告白されているのです。
「まぁお付き合いの邪魔はしないから、またね」
KYな邪魔をして立ち去るススキさん。
先輩だから強く言えない達裄。
達裄の手にはススキさんから梱包されたチョコが乗っています。
「んで揚羽。さっきの続き……」
「知らない!」
彼女の特権を取られたし、何より受け取った達裄にムカムカする。
達裄は好意を無下にしない優しさがあるのは承知だけどそれを抜きにしてもせめて私の不在の場で受け取って欲しかった。
ツカツカと私が前を歩く。
「ま、待って揚羽!?俺は1番揚羽ちゃんが好きなんですよー!」
「いや、キモいから」
「……」
本当は1番好きと1番好きな彼に言われて恥ずかしくて飛び上がりそうだけどいまは許してあげられない。
「べー、だ」
達裄を振り切り私は学校に走り出す。
どうせクラス同じだから教室でまた会うんだろうけど。
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