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あずみは思わず、(おやおや・・・おしろい展開に発展しそうかな・・・)と内心わくわくと二人の会話に耳を立てた。
「君、助教授を目指しているんだって。」
「イエ、薫さんを・・・教授を助けたいと思っているだけです。
僕はそこまで有能ではありません。」
「君ならできるよ。わからないことがあったらいつでも質問してくるといいよ。」
「助かります。」
「じゃあ、僕はここで・・・・」
(え・・・・)あずみの期待とは裏腹に山波はそそくさと帰って行った。時計を見たら、後十五分ほどで緑山のバイトが終わる時間だった。小さな車は、キーというタイヤの音を立てて屋敷の坂を下って行った。
「チッ」
あずみは小さく舌打ちをして自分の部屋へダッシュし、ワンピースを脱ぎ捨てて、いつものダルダルのスエットに着替えた。
「ちょっと、あずみ君。」
雅があずみを捕まえようと腕を出し、あずみはそれをかわそうと体をくねらせながら廊下を早足で歩いた。
「鈴木さん。僕、お風呂に入りたい。」
「じゃあ、僕も一緒に入る。風呂に入って話そう。」
「来るな、一人で入る。」
「いいじゃないか、男同士なんだし。」
その言葉が一番嫌いだった。一番ムカついた。
(だったら、何でキスなんかしたんだよこのバカ)
「まったく、お前はどれだけ無神経なんだよ。」
あずみは思い切り・・・割れるのではないかと思うほど、ものすごい音を立て、風呂の扉を閉めた。
「ご、ごめん・・・でも、教授が・・・」
「もう、帰って来たんだからいいだろ。お前も帰れよ。」
「いや、教授からしばらく家にいてあずみ君を見ていてくれって言われたんだ。
だから教授が帰ってくるまでここに住むよ。」
「はあ?」
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