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そのあずみを窮地から救ったのは、もちろん雅だった。
薄れゆく意識の中でやめて・・・やめて・・・と必死で懇願したが、雅の親切心は度を超えてあずみの体を拭き、パンツまで履かせる始末。
ほんのちょっと貧血で倒れただけだったが、次に恥ずかしさのあまりほんとに気を失った。
そして夜九時を過ぎた頃、自分のベッドで目覚め、雅は、あずみの机で勉強をしていた。
「腹減った・・・」
「あ、あずみ君大丈夫。どこか痛いところない?」
雅はベッドの傍へ寄るとあずみの前髪を指先で撫でた。
「なんともない。触るな。」
手を跳ね除け、立ち上がるとまだ足元が少しふらついた。
「ごはん、持ってくるから。待ってて。」
雅がそっとあずみの肩に手をかけると、それも払いのけ、
「いい、居間で食べる。」
そう言って、壁を伝いながら部屋を出た。
「そんなに居間がいいなら連れて行ってあげる。」
雅は、意地を張ってよろよろと歩くあずみをひょいっとお姫様抱っこした。
「ちょ・・・ちょっと!下ろせって。」
体の大きな雅にはか細いあずみが少々暴れても、どうってことはなかった。バタバタ暴れてはみたものの、あっという間に居間につきいつもの席に座らされた。
「今日はシチューだよ。今温めてくるから待っていてね。」
そういうと、台所へ行き、鈴木の用意してくれていたサラダとパンを運び、温めたシチューを目の前に置いた。
「はい、スプーン。」
あずみにスプーンを握らせて、胸にナプキンを挟んだ。
「あずみ君は汚すから。」
雅はあずみのすぐ隣に座りビールを開けた。
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