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「もうビール飲むのですか。まだ早くないですか?まだお勉強してはどうでしょう・・・」
「今日はほぼ一日中していたからね。あずみ君は緑山のところに泊まったんだ。」
「はい、山波さんが出張で・・・規夫君から電話かかってきませんでしたか?」
「かかってきたよ。久しぶりに緑山の声を聞いたよ。」
「火曜にあったばかりでしょ。」
「そうだった・・・ちょっと前まで、毎日一緒だったから、調子狂うよ・・・」
「幸せそうでした。山波さんとの生活。ラブラブでした。」
あずみは雅が緑山の思い出にふける前に言った。
(あれ、何でこんな事言ったんだろう・・・)
そう思いながらも、
「一緒のお布団に寝てました。だから、もう一つのお布団は新品だから僕が使っても問題ないと・・・」
そんなことまで言わなくても・・・と言うことまでペラペラと話した。
当然、雅が緑山のことを好きだと知っていてわざと話したのだ。
雅は皿のシチューをかきまぜながら、あずみの話す、緑山と山波のラブラブ話を聞いていた。
「よかった・・・幸せそうで・・・・」
そう言った雅はうつむいたままだったが、とても苦しそうに見えた。
嫉妬した・・・ひどい罪悪感を感じ、雅を居間へ置き去りにして自分の部屋へ駆けこんだ。
一時間ほどして部屋へ来た雅が、寝たふりをしているあずみの隣に入り、背中を向けて寝た。あずみは全く眠れなかった。だから、寝ている雅の背中に小さな声で「ごめんなさい」と言った。
「え?どうして?」
「起きていたのですか?」
「うん。なんだか眠れなくて・・・」
「僕があんなこと言ったからですか?」
「緑山の事?」
「そうです。」
「緑山は本当に幸せそうでよかった。山波さんもなんだか生き生きとした顔をしていたね。
今日会えて本当に良かった。」
「本当にいいのですか?」
「だって、君だって言っていただろ。俺だったら乗り越えられなかったって。
山波さんだから幸せになれたんだって。俺もそう思う。
だから、それはそれでいいよ。」
「じゃあ、なぜ眠れないんですか?」
「なんでだろうね。」
雅は寝返りを打ち、あずみを見た。あずみは恥ずかしくて、布団で顔を隠し背中を向けたまま、じっと目を閉じて朝が来るのを待った。
時間がたつごとに雅の体温がほんのり伝わってくると、あずみの心拍数はどんどんと加速し、時計の針の「ちちち」という音ハモるように一晩中鳴り響いているように感じた。
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