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次の火曜も緑山は小さな車で迎えに来た。 あずみは男の子の服を着て玄関で待っていた。 今日は鈴木がいたから髪は綺麗にセットされていた。 「おはよう。あずみは今日もかわいいね。」 「はい。則夫君。僕は毎日かわいいです。」 「じゃ行こうか。」 今日も緑山はとても幸せそうで、車の中ではいやと言うほど山波との甘い生活の話を聞かされた。 あずみは信号のたびにあくびが出た。 「喧嘩はしないのですか?」 「するよ。すごくする。」 「そういう話を聞かせてください。」 「この間ね、山波が新しいセーターを買ってくれたの。 それを着てバイトに行こうと思ったら、可愛すぎるからダメだって。 可愛すぎて心配だからって、ずっとバイトが終わるまでお店で僕を見てたんだよ。」 「それ怖いです。 ひとつ間違うと極上のオカルトに変わります。」 「そう? だから今度は僕が山波にも同じセーターを買ったの。 そしたらとても似合って、それを着て仕事に行くって言ったからダメって。 素敵すぎて誰かに取られちゃうから行っちゃヤダって、喧嘩になって・・・ 山波は仕事休んだ。」 「はあ? ・・・で、お揃いのセーター着てどこか行ったんですか?」 「ううん家に居た。」 「セーターはどうなったのでしょう。」 「ね。セーターの事で喧嘩になったのに、その日は一日中裸で過ごした。」 「・・・僕にはちょっと刺激が強かったです。その話・・・」 「それとこの間はね・・・」 「則夫君、もうお話はやめて。 僕の中の山波さんの印象が崩れていきます。」 「あずみも恋人ができたらわかるよ。」 「僕はいりません。めんどくさい。」 「そう?」 「ええ、則夫君の話を聞かされているとなお思います。 自分の生活のほとんどが山波さんでできている。」 「それが楽しみであり喜びなんだよ。」 「そんなもんですかね。」 「そんなもんだよ。」 「あ、お兄様から伝言です。早く料理をマスターしろと。山波が心配だって。」 「どういう意味ですか。」 「お兄様に聞いてください。」
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