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「ごめんなさい・・・今日は寝ます。おやすみなさい。」
「どこか具合でも悪いのか。
君がご飯を食べないなんて・・・お医者さんに行くかい?」
「いえ、どこも悪くないです。本当に。お兄様、おやすみなさい。」
あずみはいつものダルダルのジャージに着替えてベッドに転がり、胸に手を当ててため息ばかりついていた。
「あずみ、本当に大丈夫か。」
「大丈夫です。」
「お腹がすきすぎて変になってしまったのかい?」
「違います。」
「私の帰りが遅くて心配で変になってしまったのかい?」
「違います。」
「また何か危険な遊びを考えているのかい?」
「違います!」
「あずみ・・・何があったのか言ってくれないか。私は心配で眠れないよ。」
「なんでもないです。」
「あずみ・・・」
如月は心配で、あずみの部屋へ何度も何度も来ては髪を撫で、質問攻めにした。
煩わしく思ったあずみは寝たふりをすると、如月はあずみの隣で眠った。
(う・・・狭い・・・)
眠れないと言っていたから気が済んだら自分の部屋へ行くだろうと思い、如月のことより、今日の木下の・・・出会った時からの木下のことをいろいろ思い出しては心にぬくもりを感じていた。
「あずみ。おはよう。」
「おはようではありません。僕は全く眠れませんでした。」
「いや、よく眠っていたようだったけれど・・・」
「お兄様があまりにもしつこいので寝たふりをしただけです。
しかも眠れないとか言いながら、結局朝まで僕のベッドを占拠していました。」
「占拠だなんて・・・ちゃんと半分・・・」
あずみは壁に追いやられ、如月はベッドの真ん中で枕も布団もすべて独り占めしていた。
「冬じゃなくてよかった。冬だったらあずみが風邪をひいているところだったね。」
「ほんと。でも、無理な体勢で寝違えて、本日は寝起きが冴えません。」
「そう。では、もうすこし眠りますか?」
「お兄様、お仕事は?」
「今日はお休みです。だから、もう少し眠りましょう。」
如月は壁にへばりついたあずみを自分の胸に抱き寄せ髪を何度か指で梳かすと静かに強く抱きしめた。よく、あずみが小さいころはこうして抱っこして眠っていた。二人はそれを少し思い出していた。
「久しぶりのお兄様の匂いです。」
「いつぶりかな。」
「忘れました。忘れるほど前です。あったかい・・・気持ちいい。」
「おしゃべりはやめて寝ましょう。」
あずみは何も考えずに如月の胸の中でぐっすり眠った。
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