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「起きたのかい。」
「お兄様、ここでしたか・・・・」
起きるとあずみはベットに一人で、いつもならそれが当たり前なのに、なぜか今日は家じゅうを探し回った。如月は居間から続くテラスで本を読んでいた。
いつもそうだが、すぐ見つかるところにいるのに、あずみは如月をとても遠くに感じていた。
「さあ早く顔を洗ってきなさい。
朝食を食べましょう。」
「お兄様、もうお昼ですよ。」
「そうだったね。
ご飯を食べたら久しぶりに一緒に出かけようか。」
「はい。僕、自転車を見に行きたいです。」
「いいね。行きましょう。」
なぜか今日の如月はとても機嫌が良くて、あずみは素直に甘えた。
そして素直なあずみがかわいくてそれに見とれていた。
「今日はどちらのお洋服を着るのか聞かないのですか?」
「ええ、僕はしばらく男の子の洋服しか着ない事にしました。」
「どうしたんだ?」
「なんとなくです。」
その時、ニコッと笑ったあずみの顔がとても輝いて見えて、自分からすこしずつ、離れて行く感じがした。
洗面所で鈴木に髪のセットの仕方を習っている姿にも、なんとなくだが嫉妬を覚えていた。
「フレームは赤色にしたんだね。」
「はい。木下さんにこれが可愛いと言われました。」
「そう。」
「お兄様はどう思いますか?」
「とてもかわいいよ。」
「そう言ってくれると思っていました。
お兄様の顔がはっきりと見えて嬉しいです。」
「そう。」
如月の運転で自転車屋さんに行き、青いフレームのママチャリを買った。
そして、あずみが前から行きたがっていたカフェに行ってケーキを食べ、インテリアショップにも行って、鏡やブラシも買った。
「お兄様、いっぱいありがとうございます。」
「あずみが喜んでくれて良かった。それでね、明日からしばらく出張なんだ。」
「だからお兄様は今日優しかったんですね。
おかしいと思いました。
大丈夫ですよ。行ってらっしゃい。」
「あずみ・・・なんだか急に大人になってしまったね。」
「きっとメガネのせいですよ。」
「そうなのかな。」
「そうです。僕はいつものままですよ。」
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