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「ちょっとまってあずみ。どうした?」
「なんでもない。」
「それならいいけど…」
車の中であずみは何も言わず、イライラと爪を噛んでいた。緑山は、そんなあずみをなだめるような言葉をかけてあげなければ…と思っていた矢先、
「則夫君、今日は僕、もう家に帰っていいでしょうか?
今日は少し具合が悪いので家に帰って寝ようと思います。」
「そう…」
「ハイ。ごめんなさい。」
「じゃあ、送って行くね。」
「あ・・・坂の下でいいです。」
「どうして。あの坂登るの辛いでしょう。」
「いえ、それでも歩いて帰りますから。」
あずみは車が止まるとすぐに飛び降りた。
車から降りたあずみはとボトボトと坂を登った。
登っていく途中、あの男にまんまと引っかかってしまった自分が悔しくて、腹立たしくて、初めてのキスを奪われた事が悲しくて、涙が溢れて止まらなかった。
坂を登りながら如月に電話をかけたが出なかった。
出ないと余計に悲しくて心細くて、また涙が出た。
こんなに寂しいなら緑山たちと一緒にいたらよかった・・・
けれど、一人ぼっちだった。
「ムカつく・・・」
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