100人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
「だから、キスして今日の気持ち悪いキスを忘れさせてください。」
「あずみ君・・」
「書斎に行きますか?」
「えー・・・」
「お兄様には内緒にします。」
「・・・」
「お兄様がちらつきますか?
お兄様を思い出すし、則夫君ともかぶるし・・・複雑ですね。」
あずみは肩をすくめてクスッと笑った。
「からかっているのか・・・」
「違います。早くキスしてください。」
あずみは目をつぶり唇を雅の顔の前に出した。
「しない。早くお風呂入って来なさい。ここで待っていてあげるから。」
「一緒に入りますか?」
「ここにいるから。」
「わかりました。」
雅の口調がだんだん強くなり、あずみはつまらなくなってきて、ふてくされて風呂へ向かった。結局、二人は又わかり合えないままで、雅はあずみが風呂から上がるのを待つと、無言で帰ろうとした。
「あ、そうだ。今日あずみ君があの店に行った事も、あのクニという人に会った事も、絶対緑山に言ってはいけないよ。」
「どうしてですか。」
「どうしても。訳はいえない。でも、これだけは約束してくれ。お願いだ。」
「じゃあ、キスしてください。」
「約束してくれる?絶対言わないって。」
「キスしてくれるなら。」
雅はやむ終えず、あずみのおでこにキスをしてグッと強く抱きしめた。
「いい絶対だよ。」
そう言って家から出て行った
あずみはまた一人ぼっちで屋敷に残された。
雅の温もりだけが少し残った。
最初のコメントを投稿しよう!