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「だから、キスして今日の気持ち悪いキスを忘れさせてください。」 「あずみ君・・」 「書斎に行きますか?」 「えー・・・」 「お兄様には内緒にします。」 「・・・」 「お兄様がちらつきますか? お兄様を思い出すし、則夫君ともかぶるし・・・複雑ですね。」 あずみは肩をすくめてクスッと笑った。 「からかっているのか・・・」 「違います。早くキスしてください。」 あずみは目をつぶり唇を雅の顔の前に出した。 「しない。早くお風呂入って来なさい。ここで待っていてあげるから。」 「一緒に入りますか?」 「ここにいるから。」 「わかりました。」 雅の口調がだんだん強くなり、あずみはつまらなくなってきて、ふてくされて風呂へ向かった。結局、二人は又わかり合えないままで、雅はあずみが風呂から上がるのを待つと、無言で帰ろうとした。 「あ、そうだ。今日あずみ君があの店に行った事も、あのクニという人に会った事も、絶対緑山に言ってはいけないよ。」 「どうしてですか。」 「どうしても。訳はいえない。でも、これだけは約束してくれ。お願いだ。」 「じゃあ、キスしてください。」 「約束してくれる?絶対言わないって。」 「キスしてくれるなら。」 雅はやむ終えず、あずみのおでこにキスをしてグッと強く抱きしめた。 「いい絶対だよ。」 そう言って家から出て行った あずみはまた一人ぼっちで屋敷に残された。 雅の温もりだけが少し残った。
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