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「では、もう一本いかがでしょう。
あずみはクニの制止も聞かず、もう一本ワインを開け、クニのグラスに注いだ。
「あずみ君・・・じゃあ、このいっぱいだけで、そろそろ寝よう。」
「いえ、まだ、こんなにいっぱい料理がありますから・・・」
「全部食べなくていいよ・・・さあ、あまり食べると太るよ。」
「僕はいくら食べても太らない体質なんです。」
「でも、やっぱり食べ過ぎはよくないから・・・もう夜も遅いし寝よう。」
「クニさん、もう一杯ワイン飲みますか?」
「いや・・・そろそろやめようかと思っていたんだけど・・・」
「でもお酒好きでしょ。僕もケーキ好きなんです。」
「あ・・・そう・・・」
「クニさんの好きだった人の思い出話、聞きますよ。
その方もケーキ好きでしたか?」
「そうだね・・・ケーキよりフルーツが好きだったかな。
ご飯はあんまり食べないけれど、フルーツが山盛りだととても喜んでくれたんだ。
背が高くて、とても美しく、育ちのよさそうな品のいい子で、あんな店に出入りするような子にはとても見えなかった。きっと寂しかったんだろう。
だから、みんなが狙っていた。僕は彼がほかの男と店を出ていくのを見るたびに心が引きちぎられそうなほどだった。けれどある日、とても早い時間にお店に行くと、彼はお店の前にポツンと座っていたんだ。だから、声をかけてみた。振り向いてなんてもらえないと思っていたけれど、その時はとても人恋しかったんだろう・・・ご飯を食べに行かないかと誘うと、軽く頷いてくれたんだ。僕はうれしくて、とても・・・でもその日はキスはおろか、彼を抱きしめることもできなかった。まぶしすぎて見とれていたんだ・・・門限は十一時、それまでには必ず返す約束で、それから何度かデートして・・・
約束の日が待ち遠しくて眠れなかった。」
「楽しかったですか?」
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