11.

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出ても行く当てなんてなかった。それでもとりあえず歩いた。坂を下りきったところでハイヒールを履き、バス停まで行った。 「あずみ」 小さな車の窓から緑山が心配そうな顔であずみを覗き込んでいた。 「乗りな。」 あずみは緑山の小さな車に黙って乗った。 「僕のアパートでいい?家には帰りたくないでしょ。」 「はい・・・」 「大丈夫。雅には僕から電話しておくから。教授にも。心配するなって。」 「はい。」 「お化粧、落ちちゃうよ。ほら、笑って。」 緑山は何も訳を聞かずティッシュの箱をあずみの膝に置いた。アパートに着くまで本当に何も聞かなかった。あずみも何も言えなかった。いえるはずもない。クニと外泊したことは罪だとは思ってはいない。あずみの罪は雅を意識していることにあった。仮にも如月の恋人だった人を、そして緑山の大切に思う人を好きになったなんて、口が裂けても言えることではなかった。 「今日はうちに泊まるといいよ。」 「イエ、遠慮します。山波さんとの熱々のお隣で眠れるほど僕は図太い精神を持ち合わせてはおりませんので。」 「今日、山波は出張なんだ。 僕が一人になるから、出張もなかなか行きたがらなくて・・・ でも、あずみが泊まるよって言ったら安心して行った。子供みたいで困るよ。」 「またのろけ話始まりますか?」 「のろけ話って程ではないけれど、いつも可愛いからとか、危ない危ないって何もさせてくれないんだ。出張の時も一人じゃ心配だからって、なかなか行かなくて、行っても電話ばっかりかけて来て・・・」 「のろけ話ではないですか・・・・」 「あ・・・ごめん・・・」 アパートに着くと、緑山の作ったひどい味付けの煮物と炒め物の中間のような、よくわからないものを出され、これはきっと昨日沢山食べ物を残した罰だと思いながら我慢して食べた。お風呂にから出ると布団が引いてあった。
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