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「今までは?」
「今まで?」
「山波さん以外は?」
「最低だった。なんであんな奴らと寝たのか自分でも理解できない。
どうかしていた。思い出したくもないほど・・・」
緑山は言葉を詰まらせ、走ってキッチンへ行くとコップに水を汲み一気に飲み干した。
「あずみもとうとう好きな人できた?」
もう一杯水を汲むと、ゆっくりあずみの隣に座り、あずみの肩を抱いて言った。
「まだです。まだわかりません。
だけど・・・気になっている人はいます。」
「どんな人?」
「どんな・・・・」
雅とは絶対に言えなかった。自分自身も認めたくなかった。かといってクニは恋愛とまではいかない存在だし、依田は言語道断。木下は以前連絡なしだった。
「どんな人かわかりません。ちょっと街ですれ違っただけの人ですから・・・」
咄嗟にうそをついた。バレバレのうそだった。
「うまくいくといいね。」
多分、緑山に嘘がばれている。あずみはすぐ顔に出るタイプだ。
そんなあずみの気持ちを察したのか、布団に入り照明を落とした。
あずみは全部、うまくいくわけがないし、うまくいったとしてもどの相手も皆、何かしら訳ありすぎて自分の中でうまく消化しきれなかった。そうだ、そうならいっそ皆なしにしてしまおう。木下ともだめになった。その勢いで、そのうち全部だめになる。雅だって、如月が帰ってこれば家に寄り憑かなくなるはずだ。クニだって、連絡しなければ・・・あっちも毎日遊んでいるわけでもないだろうし・・・あれだけ裕福なおじさまならほかに恋人候補は五万といるはず。
そう思ったらなんだか胸がすっきりしてきた。昨日の消化不良もやっとすっきりしてきたところだった。
「規夫君、明日はバイトですか?」
「そうだよ。」
「じゃあ、規夫君と一緒に出発してお家に帰ります。」
「いいよ。ゆっくりして行けば。お昼には山波が帰ってくるから、送ってくれるよ。」
「大丈夫です。バスに乗れるようになりました。」
そうは言ったが、あずみは今日も寝坊をした。緑山はあずみを起こさずにバイトへ行った。
あずみは何も考えず、まだ眠っていた。
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