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「反抗期・・・ですか・・・・」
「彼の家は厳しかったからね。いろいろなストレスと闘っていたんだろう。
けど、僕はそんな彼をただ見つめることしかできなかった。僕はとても臆病だから、ただ、ただ、毎日見て、挨拶をするくらいしか声もかけられなかった。彼のわがままもただ黙って受け入れる。当たり散らせば抱きしめる。そうやって何年か過ごしていたある日、彼からキスをしてくれと言われたとき、嬉しいのと怖いので体が震えてどうしていいかわからなくなった。けど、一度キスをしたら今度はやめられなくなって・・・一晩中キスしていた・・・」
山波はみるみる真っ赤になって目の前にあったトマトケチャップとどっちが赤いのか確認したくなって、卵丼にトマトケチャップをかけた。
「おなじくらいですね。」
「は?」
「イエ、なんでもないです。お話をお続けください。」
「それで・・・そのあと・・・・
こんな話聞いて面白くないよね。あずみ君は。」
「イエ、そんなことありません。それに、規夫君からも散々聞かされています。お料理教室へ行く道すがら、山波さんとの甘々新婚生活を嫌というほど聞かされてうんざり・・・もとい・・・うらやましいなと思った次第です。」
「そう・・・どんな話?」
「まず、山波さんの
それで・・・そのあと・・・からまずお聞きします。」
「あ・・・それで・・・そのあと、僕が付き合っていた女と別れて・・・あの時はちょっと騒動になってしまったけど・・・理解してくれて・・・より深まって・・・」
「ついにやってしまった感じですか・・・」
「それが、その時はまだできてないんだ。」
「あら・・・・」
「やり方が分からなくて・・・」
山波はさらに真っ赤になった。そのくらいの赤になったのか確かめたくて、ほかに何か赤いものはないか探したが、あずみの手に届く範囲に赤いものがなくて、仕方なくもう一度トマトケチャップを卵丼にかけてみた。
「山波さんの勝ちです。」
「は?」
「イエ、どうぞ、お続けください。」
「でも、あの時は別れなければならないことはわかっていたんだ。最初から彼とは住む世界が違うことは理解していた。僕は彼が幸せになれればそれでいい、その時まででと思っていた。」
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