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そして、忙しいながらも、世那は慧斗と純が並んで座っているのを見た。
何か話しているのは分かるが、詳しくは聞こえなかった。
ただ、分かるのは、2人の話す背中を見て、胸が
チクッー・・・
と、痛んだ。
(何だったんだろう?)
と、世那は思いながら慧斗を見る。
世那は忙しい事には変わらないが、慧斗を気にかけていたのだった。
全く教室に来ないし、ここ最近は喋ってない日が多くなった。
番いになったとは言え、世那は普通に両親と暮らしているからだ。
発情期も、終わったからも、あるだろう。
しかも!!
世那以外には、喋らない奴である。
純は世那の幼馴染みと知ったからか、喋るようにはなったが、他の人とは、喋らない。
イケメンだから、モテる。
だからこそ、寄ってきて、喋りかけてくる奴も腐る程いるのだが、一向に喋らないのだ。
1度、
「喋らないのか?」
と、世那は聞いた事がある。
すると、
「面倒だから、嫌だ。」
そう、返ってきたのだった。
それ以来、余り深くは考えなかったが、やはり、適当には喋れたら良いのでは?とは、若干、思っているため、純と話せている事が嬉しい。
そして、フッと笑みを浮かべた。
すると、世那の存在に気付いた慧斗が、手を広げた。
恥ずかしいと、思いつつ近付き、慧斗の手を叩いた。
そして、
「こんな所で、何してんだ?」
と、世那が聞いた。
純は、
「喋ってるっ!」
と、笑顔で、
慧斗はいつも通り、
「仕事。」
そう一言。
世那は
「ふーん。」
と、言うと、純が
「お前、反応冷たいぞ。」
そう言って、拗ねた。
すると、
「会長ぉー!!
ちょっとー!!
来て下さーい!!」
そう叫び声が聞こえた。
その時、慧斗の顔が歪んだように、世那は感じた。
だが、気が付いていないフリをした。
そして、
「今、行くー!!」
と、叫ぶと、純に背中を押され、
「行ってこい。」
と、言われた。
そして、頷いて走って行った。
その時、慧斗が寂しそうな顔をした事を知らない。
世那は、その時にはもう、体育祭の事で一杯だった。
生徒会長として、完成されたものを、来た人に提供せねばならない。
その為に、今日も走り回る。
慧斗と純が、何かしている事にも、気付かずに・・・。
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