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「世那は、如何して、自分がΩだと知らなかったんだ?
中学生くらいの歳には、検査を受けるだろう?」
それを、慧斗が言うと、世那はキョトンとした顔で、
「そうなのか?」
そう、また、首を傾げて、そう聞いてきた。
「じゃあ、世那は何だと思ってた?」
「αだと思ってた。
何と無く。
だから・・・、本当は・・・。」
そう言って言葉をつまらせた。
でも、意を決したように、慧斗に言った。
「動揺してるよ。
Ωだと、気付かされたと思ったら、今度は番いが出来て・・・。
正直、俺の人生は、どうなってんだっ!!って感じ・・・。」
そう言って、苦笑いをした。
そしたら、慧斗が突き動かされたように、世那を抱き締めた。
強く強く、それでも、世那が苦しくないように、優しく。
慧斗は、自分が世那の味方であるって、言い聞かせるように。
それに、気付いたのか、感じたのか分からないが、世那の頬に涙が伝い、終いには、子供のように泣き出してしまった。
そして、その日、2人は抱き合って、慧斗のベットで寝てしまった。
2人を優しく包み込むように、夜空に浮かぶ月の光が照らしていた。
照らされた2人の表情は、幼い子供が安心したような表情をしていた。
それは、心の何処かで、“運命”であると気付いているのかも知れない。
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