一触即発

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一触即発

目を慧斗の手が覆っている世那には、今の状況が分からない。 唯、周りが不安そうに、ザワザワとしているのは、何と無く分かった。 慧斗と純は、慧斗と世那がやり取りをしたい時から、如何にも一触即発な雰囲気を漂わせていたのだった。 周りの生徒からしたら、傍迷惑にも程がある。 それでも、気にせず2人は睨み合っていた。 更に、その状況に発車をかけたのは、世那が慧斗に身体を預けた事だった。 「お前ぇ・・・。 勝手に世那に手を出すなや。」 「はぁ? あんたに、許可なんていらねぇんだけど?」 「アァ? ふざけんなっ!!」 「はぁ? こっちはふざけてないけど? ちゃんと、親御さんに許可貰ってる。」 「おいっ!! 世那っ!! それで、納得してんのかよっ!!」 「っな!! ちょっ!! 勝手に世那まで、巻き込むなっ!!」 「うるせぇ!! どうせ無理矢理、迫ったんだろ?」 「っく・・・!」 「だろ? こいつは、まだ・・・。」 そうやって、言い合いがヒートアップ仕掛けたところで、 キーン コーン カーン コーン と、チャイムの音が校内に響き渡り、その上、純の声を遮った。 慧斗と純は、 「「チッ」」 と、揃って舌打ちをした。 すると、世那が慧斗の腕の中から顔を出し、 「そろそろ教室に行こう?」 と、首を傾げて言った。 2人は、揃いも揃って、顔を真っ赤にし、 「おう。」 と、言ったり、無言で頷いたりした。 そして、3人で教室に向かった。 その向かってる途中、純が慧斗の隣に行くと、 「慧斗。 お前、後でツラを貸せ。」 「はぁ? 意味分かんない。 何で?」 「用があるからに、決まってんだろ? 世那のことだ。」 それを聞いて、少し考えた後、 「分かった。」 そう慧斗が頷いたら、頷いたのをチラッと確認したら、純は世那の隣に並んで、歩き出した。 それを見て、慧斗は苛立ったが、感情を抑えた。 何故なら、慧斗が見たことの無いような、綺麗な笑顔を浮かべながら、喋っていたからだった。 そして、慧斗は自分の中にドロドロとした感情がある事に、戸惑いと驚きを隠せなかった。 慧斗にとって、その感情は置いてきたものだったからだ。 慧斗は、そんな事を教えてくれた世那を、自分だけのものにしたいという、独占欲で一杯になった。
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