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見る物聞く物、触れる物。全て初めて。
「シュ、シュワシュワだ!」
マスターに勧められて初めて飲んだ麦酒に驚きの声を上げる。
この日は初めて酒場を訪れてから二週間ほどたったくらいだっただろうか。
私は乳酒のお礼の月酒と、酒と等価と思われる黄銅の粒を手に再び酒場を訪れていた。
私が黄銅の粒を渡すと、「僕が言っていたものよりまた上等なものが来た」と苦笑してまずはこの麦酒を差し出してくれた。
今日は黄銅の粒一つで私の心ゆくまで飲んで良いらしい。ただし、私が黄銅の粒を持ってきたのは内緒にするようにとキツく言い含められた。
どうやらヒト族にとって鉱物はとても価値が有るものらしい。
ちなみに月酒を渡すと、非常に珍しがられた。
マスターは月酒を見たことがないらしい。
正体を明かそうとするように蓋を開けて覗き込んだり、匂いを嗅いでみているが、何もわからなかったらしくて、この酒がどういうものか詳細を訊ねてきたが、エルフの酒などと言えるはずもないので、これは村の特産品ではあるがどういう酒なのか自分も良く分かっていないと誤魔化し、カウンターを離れた。
だが今日も誰かに話しかけられそうな隙は無い。
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