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「じゃぁ今回はセツナ」
お前が行け。
そう命令されて、一人でイヴの楽園に行くことは珍しくもなんともない。
むしろ四人全員で行くときの方が数少なく、そちらの方が珍しいだろう。
ブラックが相手なのならばまだしも、ホワイト相手に数人も行ったら邪魔でしかないからだ。
ホワイトが相手ならば、たとえ十数人いたとしても一人で処理することが出来るだろう。
しかも今回処理する人数はたったの一人。
ならば余計に一人で十分だ。
けれど――――
「俺も行くよ」
それを許さないのが彼、ゼンである。
ゼンはイヴの楽園に続く扉の前に腕を組んだ状態で寄りかかっていた。
「別に必要ないだろう」
アザミから命令を受けた時にゼンも部屋にいて、内容は聞いていた筈だ。
他の手を借りる必要はないということを。むしろ邪魔になるくらい簡単なものだということを。
セツナは溜息をつきながら首を横に振り扉を塞ぐような形で立っているゼンに退くよう目線を投げかけるが、彼はそれを無視し、その場から一歩も動かない。
「手は一切出さないから」
「そういう問題じゃない」
「邪魔にならなければいいんでしょ?」
「だから、」
そういう問題じゃないだろう、と続けようとするが、ヒュッと見えない速さで突き出されたサバイバルナイフによって、それは止められる。
反射的に、否、ほとんど無意識に首だけを逸らし避けたが、それでも先が引っ掛かり、頬に薄く一筋の線が入った。
「さっすが。よく避けたね、この距離で」
まぁ避けると思ってたけど、とサバイバルナイフを持ち、腕を伸ばした状態のまま口笛でも吹きそうな雰囲気でゼンは笑った。
よくもまぁそんな軽口が叩けるものだ。
再度溜息をつきながらセツナはその線から流れ出した鮮血を腕で拭う。
「危ないだろう」
「だってセツナが連れて行ってくれないからじゃん」
「だからってこの距離から顔面に刺されたら俺でも死ぬ」
「いいよ、俺を放っておくセツナなんか死んじゃえばいい」
「お前なぁ・・・」
ゼンが自分に執着していることは薄々と感じていたが、ここまで言われてしまえば嫌でも執着されていると認めざるを得ない。
もともとゼンとはいつも一緒にいたし、アザミに拾われてからアザミというよりもゼンに世話をされたようなものだから、これを“執着”と言っていいのかはまだ疑問に思うけれども。
「これでアザミにゼンと一緒に行けって言われたら行くんだろうね」
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