忘年会に新年会

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ベスちゃんがお手洗いに向かったのと入れ違いに店員さんが頼んでおいたご飯を持ってきてくれた。 お椀にやんわりと盛られた白いご飯からは、ほんのりと湯気が見える気がする。 ほかほかだ。 「お待たせしました」 ニッコリ微笑むおかっぱ頭の店員さんの名札には『ミナツ』の文字。 どんな苗字なんだろう。 はたまた、下の名前かな。 一瞬、そんなことを思ったけれど、 「またご用事がありましたら、お気軽にポチッとしてくださ~い」 と、陽気に言いつつ、お尻をモゾモゾっと動かして去って行った。 キャラが濃いなと思ったけど、そんなことよりも目の前のご飯だ。 「カトビー、ご飯を食べながら飲むって、ありなわけ?」 山田さんが白い目を向けてくるけど、いいじゃないか。 ちなみに、カトビーは私のことだ。 営業部に加藤さんという男性がいるから、後から入社した私は加藤Bで略してカトビーと呼ばれている。主に山田さんから。 他の人は先輩社員はチカちゃん、後輩からはチカさんと呼ばれることが多い。 「日本人のソウルフードですよ。それに、ご飯がないとお鍋も美味しくないし」 「まぁね。お鍋とご飯の組み合わせは、まぁいい。ビールとご飯もまぁ許すとしよう。だけど、カトビーは塩ご飯をおかずに白飯を食べたりするだろ」 ビールとご飯の組み合わせを許すならば、さっきのご飯を食べながら飲むのはありなのかという問いの答えは『あり』で終了だろうと思うけど、塩ご飯をおかずに白飯を否定されていたら、そこを肯定させなければいけないわけで、この会話が続くのか。 割りばしを手にとり、上の方がうまく割れなかったことに、この会話の行く末を見るようでイヤな気がしたけれども、愛するご飯のためである。 「お好み焼きをおかずにご飯を食べたり、たこ焼きをおかずにご飯を食べたり、パスタをおかずにご飯を食べる行為と同じですよ。全部炭水化物だし」 決まったと思った。 山田さんだってお好み焼きをおかずにご飯を食べるタイプだ。
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