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「キタキタキタキタキタキタキタキタ!」
待ち合わせのメッカ、金時計で、肩下あたりで揺れる髪の毛と共に、片手を振って自分の居場所を猛烈にアピールしているのは昨夜私をひっかけたベスちゃんだ。
その隣に立っている背の高い女の子はベスちゃんの大学時代の友人のはず。
前にお食事会に誘ってくれたことがある。
あのときは確か……ベトナム料理の店に連れて行かれた。
「久しぶりだね、ベスちゃん、イッシーちゃん!」
挨拶をしたら、ケラケラといつも以上に笑うベスちゃんがいた。
「昨日、会ったばっかじゃないですか! しかも、アフロがいるのにガン無視って!」
気が付いていたさ。
ベスちゃんの近くにアフロ頭の男の子がいるのは、気が付いていた。
そして、それが噂に聞いている絶倫のベスちゃんの彼氏だということも分かっていたさ。
だけど、紹介もされていないのに勝手に挨拶してもいいものかどうかと思うところだ。
「いつもエリーがお世話になってます。藤木です。お噂はかねが伺ってます。チカさんですよね?」
エリー!?
一瞬、ベスちゃんでありトミーである後輩のことじゃないような呼び名におののき、我に返った。
「はい、そうです。こちらこそ、いつもお世話になってます」
と挨拶したら
「はいはいはいはい、コージーは下がった下がった。こっちがイッシーの彼氏の山根で、こっちの雰囲気イケメンが山岸さん、そしてこっちの坊ちゃんが新藤君です」
次々に男の人を紹介されて軽く混乱する。
人の顔と名前を覚えるのは苦手だ。
「それでは、いきまっしょい♪」
ベスちゃんが先頭になって歩き出したから、ついていくしかないみたい。
ベスちゃんとイッシーちゃんしか知らないんだけど、私がここにいる意味ってあるのか……。
アウェー感が半端ない。
美味しいリゾットが食べられるって言っていたからいいか。
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