忘年会に新年会

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「飲み物とリゾットをまず注文しないと!」 予約してあったらしく、西洋風居酒屋で席に案内された直後にベスちゃんが叫ぶ。 「なんで早速リゾット?」 笑いながら雰囲気イケメンがベスちゃんに聞くとベスちゃんとイッシーちゃんが 「チカさんの分です」 と声を揃えて答えた。 息がぴったりだ。 えっという感じの顔で向けられた視線が軽く痛い。 言い訳しなくてもいいはずだと思いつつ、こんな時にいつも繰り出す言い訳を今夜も発動するのだ。 「すぐに酔っちゃうんで、先にお腹にたまりそうなモノを食べてから飲むようにしているんです」 ウソです。 本当は、お米が好きだからです。 炭水化物は正義の味方です。 お酒にはさほど興味がないから、お任せしてみたらワインをボトルで頼んだみたいだ。 なんだ、この集まりは。 オシャレなお食事会なんて聞いてないぞ。 忘年会だって聞いたぞ。 リゾット、まだか。 絶対に違和感があると思うんだけど、私の存在。 私以外のみんなは旧知の仲ぽい。 場違い感、半端ない。 居心地の悪い思いを数分していたら、ワインが届けられた。 みんなの元に配られたと思ったら、ベスちゃんが重大な発表があると言い出す。 「ほら、コージー!」 ベスちゃんがアフロの藤木君を立たせると、緊張したような雰囲気を漂わせて藤木君が立ち上がり、ベスちゃんを見てふわりと笑った。 「えっと、まだ細かいことは決まってないんですけど、僕とエリーは結婚します!」 あぁ……。 周りの皆が 「おめでとー!」 と盛り上がるのに、1拍遅れてしまったけれども、私もそのおめでとうの輪に加わった。 お祝いしたい気持ちは心の奥底からある。 幸せになって欲しいと思う。 でも、ジワリと、自分が置いていかれてるとも、思う。
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