忘年会に新年会

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粉チーズがたっぷりと振りかけられたトマトベースのリゾットの味も、なんだかよく分からない。 藤木君の隣で幸せそうに笑うベスちゃんを羨ましいと思う。 ベスちゃんは、ちゃんと選ばれたんだと、羨ましく思う。 結婚するなら千夏だと思ってたんだよね。 千夏となら、結婚してもいいって思ってたんだ。 でも、結婚したいと思う相手が出来ちゃったんだ。 ごめん。 結婚したいと思う相手として選ばれたベスちゃんを、羨ましいと思う。 何年も付き合って、そろそろだと思ってた。 浮気に気が付いたのは、3年前の夏が過ぎた頃。 別れるという選択肢は、自分の中になくて、会社の前で待っていたあの人が言い訳をするものだとばかり思っていた。 学生時代の友人期間を含めて8年間が、あっけなく終わった瞬間を思い出して、胸の奥がキリキリする。 「チカちゃんって呼んでいい? あっ、俺よりも年下だと判断したからなんだけど。ちなみに俺30。ダメならチカさんにする」 雰囲気イケメンに声をかけられて、この中で雰囲気イケメンが一番の年上だと気が付いた。 「私の方が年下です」 「じゃぁ、チカちゃんね!」 くったくなく笑う大きな笑顔が目の前にパッと現れて、過去に飛ばされてささくれ立っていた気持ちが少し凪いだ。 「山岸さん! チカさんの好みは山岸さんとは違いますからね! チカさんは、体と心の大きな不器用な人が好みですから! ざーんねーん!!!」 ベスちゃんが大きな声で昔、流行ったお笑い芸人みたいに言った言葉に笑ってしまった。 体と心が大きくて不器用な人がいいと前にベスちゃんに言ったときに頭の中にあったのはたったひとりの元カレで、その人と正反対の人を思い浮かべて話したのだ。 本当は、あの人の器用になんでもこなすところが好きだった。 細いカラダに何を着てもオシャレに見えてしまう雰囲気が好きだった。 ちょっとしたことに嫉妬したりする部分も、可愛いと思っていた。 裏切られて、捨てられたはずなのに、今でも、心の中で輝いている。
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