霧の平原にて――最強戦姫

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産まれた時のことは噂で聞いている。覚えてなどいない。 ボロボロのテントの中で母が産んだと聞いている。火矢が飛び交い、痛みにのたうち回る兵士の声、それが世界が私に初めて与えた音だった。 父は既に戦死していた。母は私を守り、施設に預けた後に餓死したと聞いている。 我が名はレクシア。だが【最強の運を持つ戦姫】と呼ばれる。白髪の戦姫とも。 何が幸運だ。 一体私のどこが恵まれているというのだ。 両親の如く私を迎えた施設長は私を犯そうとした、まさにその時に心臓発作で死んだ。 凌辱ならば既に受けていたも同然だ。だが人はそれを幸運と呼ぶ。 男嫌い? 当たり前だ。 僅かな金で施設を放り出された後は、軍に志願する以外、生きる手段は何一つ無かった。 無学、癇癪持ち、粗暴。誰が雇う。 私は一度も戦いに負けたことがない。相手の隙が見えるだけだ。 そんなものは数を重ねれば、命を賭して戦えば誰にでも見える。 だが人はそれを幸運と呼ぶ。 私にはたった一つだけ、ひた隠しにしていることがある。 背に翼の痣があることだ。だから肌は誰にも見せはしない。 それは帝国で禁じられた、「魔法使い」であることを意味する。 知られれば死罪だ。
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