第6章

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 嗚咽する隼人の頭を胸に抱き寄せ、きつく、きつく抱き締める。遠矢がすべてを失ったと思ったあの夜に、十八歳の隼人がしてくれたように。 「本当にごめん、隼人。俺が悪かった。俺が弱くて、意気地なしで、覚悟がなかったからいけなかったんだ。二度とおまえから離れない、絶対に……!」  隼人の涙が胸元に染み込んでいく。その熱さを感じながら、遠矢は全身全霊を込めて、囁いた。これまでずっと、後ろめたくて言えなかった言葉を。 「愛してる……隼人」  胸の中で隼人が顔を上げた。視線を合わせる。潤んだ目と、涙に濡れた目が見つめ合う。互いしか見ない視線が求め合う。もっと確かな繋がりを。 「遠矢……! 俺も、愛してる、遠矢」  喘ぐように言った隼人の熱い頬をもう一度両手に包み込む。今初めて、隼人が自分の一回りも年下であることに気付いたような気がした。若くて純真な心を守ってやるのが年上の自分の役割なのだと。  隼人の頼もしさに寄りかかり、甘えるだけだった遠矢はそこにはもういなかった。やっと、支え合いたいと願う、スタート地点に立ったのだ。 「隼人……」  顔を寄せ、唇を重ねた。涙に濡れ、熱を孕んだ唇。愛おしい唇。  塩辛い涙の味が舌に触れる。隼人の乱れた息を口内に感じる。背中に回された隼人の腕が遠矢の体を引き付け、ふたりの間に風さえ通る隙間をなくす。
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