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「おいズミ、起きるんだ。絵莉さんが帰ってきた」
がばっと音がしそうなほどの勢いで頭を起こしたズミさんだったけど、何度か瞬きしたと思ったら、急にソファから立ち上がりどこかへ行こうとした。
「どこに行くつもりだ。今さら逃げるなんて情けないにもほどがある」
シンに後ろから襟を掴まれて、ズミさんはぐうと情けない声を出した。
往生際が悪いな、ズミさんも。
「なあ、おい冬吾。本当に絵莉ちゃんは喜んでくれるんだよな」
窓にもたれていたらふたりを眺めていたら、体勢を整えたズミさんから急に話を振られた。
「まあ多分……」
ズミさんの後ろで、そこは嘘でも肯定してくれないと困るというように、目を見開いたシンが左右に頭を振っている。
「絵莉さんは喜んでくれますよ。ズミさんのこと、好きなんですから」
仕方なく太鼓判を捺したものの、もし絵莉さんが戸惑った表情でもしたらどうなるんだろうなと思う。この様子じゃとてもじゃないけど、立ち直れなさそうだ。
「冬吾が言うと、なんか嘘っぽいんだよなあ」
ガラスハートのおじさんは本当にめんどくさい。
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