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七福決定屋
とある町の外れに、その店はあった。
どこにでもある喫茶店のような見た目だが、そこは喫茶店ではない。『七福決定屋』という一風変わった名前の店だ。何でも相談者の未来を見通して、その人が進むべき道を決めてくれるらしい。僕もこの前、初めてネットの匿名掲示板でこの店の存在を知った。そこに電話番号も記載されていたから、すぐに予約を取り付けて今日この店を訪れのだ。軽装で来てしまったが、特に服装の指定もなかったので大丈夫だろう。
「失礼します」
僕はゆっくり扉を開けて店の中に入った。カランコロンとドアベルが店内に響く。店内はもぬけの殻で自分以外に誰も客はいないようだ。
「いらっしゃい」
カウンターの椅子に腰掛けて新聞を読んでいたウエイトレスのような格好をした人の良さそうな白ひげのお爺さんがこちらに気づいて近づいてくる。この声は予約の際に電話対応してくれた人だ。
「あの~、3日ほど前に電話で予約をしていたものですが」
「あぁ、はいはい。カウンターの椅子に座って少しお待ち頂けますか?」
名前を言わずとも分かってもらえたようだ。おそらくあまりここを訪れる人はいないのだろう。
言われた通り椅子に座っていると、店の奥からさっきと別の人が現れた。服装は同じだが、口元に髭を生やした恰幅の良い60歳くらいの男性だ。
「いらっしゃいませ。当店を初めてご利用されるお客様ですよね?」
「はい」
「では説明いたします。当店は決定屋といってお客様が悩んでおられる物事をこちらで決める、いわばお悩み相談のような店です。勿論、私達の決定は絶対ではないので不満があれば変えてもらって構いません。しかし、その場合でも料金は頂きます。よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
こちらの返事に男は1回頷いた。
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