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客 「無言」
運転手「・・・・・・」
客 「無言」
運転手 「あー。ええと。すみませんね、声を荒げたりして。かんべんしてくださいな。
あー。それはそうと、お客さん。あのお・・・」
客 「無言」
運転手 「変なことを頼むけれど、気を悪くしないでくださいね?
その、やっぱり何かしゃべってくれませんか?
何でもいいから。そうだ。何でもいいんですよ。
なんていうか、これじゃあアタシは独り言を延々、くりかえしているみたいで。まったく、そんなカンジで。
いや、どうにも気づまりなのを通りこしてね。そうやって、だんまりを決めこまれると」
客 「無言」
運転手 「なんだか、怖くなっちまって。たまらなくって。
いや、怪談じみた話を言いだしたのはアタシだし。いい年をして大人げないってのは分かってるんですが。
その・・・さっきからの、お客さんの雰囲気っていうか。それが、その」
客 「無言」
運転手 「それがーーどうにも薄気味がわるい。気持ちがわるいんだ・・・」
客 「無言」
運転手 「アハハハハ。ハハハハハハハ!
ダメですかね? アハッ。アハハハハハハハハ」
客 「無言」
運転手 「・・・・・・」
客 「無言」
運転手 「・・・・・・どこまで続くんだろう、このトンネル。
おかしいよ。こんなに長いはずはないんだよ。
ここは。
こんなに長い道理は。ここが」
客 「無言」
運転手 「対向車だって一台も来ない! 後続車も!
おかしいよ。見えるのは壁面の、暗い灯りばっかりでーー先行車のテールランプも何も見えないなんて!
深夜帯にしても、こんなことってあるのか? こっちまで頭がなんだか」
客 「無言」
運転手 「なんだか、おかしな具合に」
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