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卯月は湯ノ花駅を挟んだ反対側。
駅手前の本屋で少し時間を潰してから行くつもりで歩いてると、道の反対側に馨さんを見つけた。
70代の夫婦と一緒に駅の方向へと向かっている。
今日はあの人達と一緒に出掛けてたのか
何となくそんな事を 思った。
駅前で待ってると「お待たせ♪」の声と共にいつものふにゃんとした笑顔で現れた泉さん。
普段の着ぐるみ姿に見慣れてたせいか、着物姿の泉さんに見とれてしまった。
「……ど~したの?」
「ッ!……何でもない。行くぞ」
小首を傾げ上目遣いで覗き込んだ顔が、あまりにも近くにあり慌てて歩き出した
……アレは癖なのか?心臓に悪いから止めてくんねぇかな
チラッと隣を見ると、泉さんがいないのに焦り周りを見渡した
後ろの方をニコニコとマイペースで歩いている
良かった。ホッとした気持ちとちょっとした苛立ちで彼女を待ち無言でその手を握った。
「へ?」
泉さんの歩調を合わせて速度を落とした俺に、隣からの視線が突きさる。
「……はぐれないように、だ……」
ギリギリ聞こえる程度の声でそう言ってみたが、思ったよりぶっきらぼうな言い方になってしまった。
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