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風呂から出てリビングに入ると、着ぐるみパジャマの泉さんがソファーで膝を抱え、携帯に向かって唸ってた。
「どうした」
「ん~……熊なのにナメクジだから苦手なのよねぇ~……」
「・・・何がだよ」
最近、泉さんの突然始まる斜め上な会話にも慣れてきた。少しだが。
しかし、これはわからない。全く理解できない。
「熊とナメクジがどうした?ソコに行き着いた話をしろよ」
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーター片手にソファーに座ると此方を一瞥して口を尖らした。
「来たの。馨ちゃんちのおとうさんとおかあさんが」
あぁ、あの時見掛けたのはご両親だったのか。と納得した。確か定年退職して今は九州にいると聞いた。
で?何故泉さんが唸ってるんだ
「・・・それで?」
熊とナメクジはどーしたっ?!
熊みたいな体格の親父さんとナメクジみたいな陰湿なお袋さんって意味か?
確かに立派な体格の親父さんだったけどお袋さんの性格は知らんわッ。
「明日会わなきゃいけなくなった」
膝の間に顔を埋めてしまった泉さんに、ポロリと口が滑った。
「熊とナメクジにか?」
あ、間違えた。
「・・・何ソレ」
「さっき、そ~言ったじゃん」
目が点の泉さんとしばし見詰め合うこと数秒
「ぶはっ!何ソレェ~!アハハハハッ違うよぉ~ブフフッ!」
爆笑した
どうやら熊みたいな体格なのにナメクジみたいにネチネチじっとり嫌味を云う親父さんが子供の頃から苦手だそうだ。
馨さんがオネェになった元凶か。
幼馴染なんだし親とも親しいのだろう、一緒に食事でも。なんて話か
そう思ったのに違うらしい。
思ってもみなかった言葉に耳を疑った
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