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「ふぅ~ん……『彼女役』ってことは『彼女』じゃないってことなんだな」
「ぶふっ。前にも云ったけどあり得ないよぉ。馨ちゃんの事お兄ちゃん……と云うよりお姉ちゃんって思ってるもん」
そうか。と納得したけど、まだモヤモヤする。
いや、馨さんがお姉さんと云うのは安心したがな……
翌朝、いつもの時間に帰って来た馨さんはかなり疲れきった様子だった。
「お夕飯ごめんなさいねぇ、ミヤから聞いたかしら?うちの両親いつも突然だから」
「気にしなくても大丈夫だよ。
泉さんとの待ち合わせの前に馨さん達を見掛けたよ。お元気そうで何よりじゃないか」
ダイニングチェアに腰掛けた馨さんに、朝食を作りながら答えた。
「あら、そうだったの?
ふふっ。元気良すぎなのも困りもんよ?嫌味に磨きが掛かって迷惑なのよね、あの肉布団。ミヤの事、バカにするんだから頭に来ちゃうッ!」
・・・自分の親を『肉布団』って……と苦笑いした瞬間、その話を聞いてムッとした。
「それは同感だな。泉さんはちょっと変わってるけどそこら辺の女より素直で素晴らしい女性だよ」
ふざけんな肉布団。肉に目が塞がれて見えてねぇんだろッ!
「あら……湊くんがそんなに誉めるなんて、何かあったの?」
無意識に出た台詞に、馨さんはニンマリと笑みを浮かべ乗り出した。
「は?!い、いや、それより今夜食事に行くんだって?」
話を反らしたくてふったのに、口にしただけで胸がざわつく。
「クスクス。まぁいいわ。
食事ね、そうなのよ。先輩の店なんだけどお互いの両親が仲良しでね、丁度良かったわ」
「それより聞いて!あの肉布団、食事に行った帰りにお店に来たのよ」
その後は親父さんの愚痴を延々と聞かされたのだった────
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