【其の8】ポヤポヤ覚悟しろ

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港近くにあった少し大きめの建物の横。"Parantua"と書かれた看板の駐車場に車を止めた河合課長に、訝しげな表情を向けた。 「ここですか?」 「おぅ。行くぞ」 ワクワクしてるおっさんの後ろに付いていった 色とりどりの花や草木の庭の先に見えたのは、白い玄関、白い窓枠が映える赤茶色の壁の北欧風の外観。屋根から煉瓦の煙突も見える。 スロープがある広いエントランスデッキにはベンチが置かれ、丸くくり貫かれた場所から真っ直ぐ伸びるシンボルツリーがライトアップされていた。 どうみても仕事帰りのおっさんが来るような店じゃない。俺がもっとも苦手な洒落た店 「ここ何屋かわかんないですよ、ホントに飯食えるんですか」 「皿に乗った肉が描いてあるから大丈夫だろ」 確かに"Parantua"とだけ書かれた看板には皿に乗った骨付き肉とジョッキが描かれてたが。 「いや、間違えてたらみっともないですって」 「だからお前と確認しに来たんじゃねぇか」 嫁と来て間違えてた方がカッコ悪ぃわッ。と俺を引きずって行く。 すべての基準は奥さんかよ……と諦めた。せめて敷居の高い料理店じゃありませんようにっ! 三段あるエントランスデッキの階段を上がり目に入ったのは、大きめの扉の隣にある立て看板 お洒落な黒板のウエルカムボードはwelcomeの文字と営業時間。それとメニュー表。 「創作料理の店だってさ。魚介もあるじゃん。 へぇ~値段もさほど高くないし、酒の種類も結構あるぞ。後は味だな……」 横から覗き込むと彩り良く盛られた美味しそうな料理の写真と値段が表記されてる。まぁまぁ普通の値段で安心した。 よく見る居酒屋メニューもあるけど俺の知ってるものよりお洒落に仕上がっているようだ。 確認したメニュー表をニンマリ満足げに元の位置に戻す河合課長に付いて店内に入る。
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