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客が減ったからか、それとも意識したからか。話の内容も聞こえてきた。
「──外食で良かった。お前の部屋だと美絢子の作ったつまみしかないからな。馨もおかしな喋り方もしないし─「あなたッ!」「父さん、いい加減にしろッ!」
親父さんは顔を赤くしてご機嫌な様子だったが、聞いても気分のいい話じゃなかった。
「……大介おじさん。私、馨ちゃんの喋り方、嫌いじゃないよ」
ニヘッと笑ったその言葉に眉をひそめ、より一層声を張り上げた。
「だからお前はバカなんだ。なにが『馨ちゃん』だ。大の男に向かって『ちゃん』付けはよせと何回云えばわかるんだ!いい加減利口になれッ。お前の親は躾も出来ないのか」
見下して鼻で笑う姿に、怒りを抑えられない。
何故他人がいる前で彼女が中傷されなきゃいけないんだ!
「チッ!ヒデェなあの親父。
アレ、店長の親か?何やってんだよ、泉ちゃん可哀想じゃねぇか。場所考えろよ」
河合課長が苛立ったように、他の客もヒソヒソと不快感を露にしている。
俯いてしまった泉さんに、色んなモノが振り切れた。
「あッ?おいッ湊!お前───」
河合課長の呼ぶ声も聞こえないほどだ
「ミヤ、父さんの言うことなんか気にしなくていいからね」
「 ん。……大介おじさん、ごめんなさい。でもね、お父さんもお母さんも─「女が口答えするなっ!
馨、お前がアレじゃないのはわかったが、女の趣味が悪い。コレのどこがいいんだ、昔から全く成長してないじゃな─「あなたッ!もういいじゃない、帰りましょう」「タクシー呼んでもらうから。このままじゃ店の迷惑になる」
「お前らは黙っとけッ!
馨、あんなチャラチャラした仕事は辞めて長崎に来い。仕事も女も俺が用意してやる。わかったな」
「はぁ~……その話は昨日─ッ!?」
うんざりした馨さんがため息と共に顔を上げ驚いた
「こんばんは、馨さん、泉さん」
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