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間に合った。
丁度タクシーに乗り込むところだ。
「待ってくださいっ!」
訝しげな視線を向けた親父さんに、頭を下げた。
「猪亦さん。先程は生意気言ってすみませんでした。」
「ちょっ、やだ頭下げないでよ。謝んなきゃいけないのはアタシ達なんだから。ホント、御免なさいね」
慌てた馨さんが申し訳なさそうに云うのを制し、毅然とした態度で立つ。
「でも、ふたりを馬鹿にされるのは許せません。俺、馨さんの気遣いに助けられたし、泉さんの無邪気さには癒されるてます。
俺だけじゃありません。皆から慕われてるんです。だからあんな言──「わかっとる」
・・・は?
一瞬思考が止まった。俺だけじゃなく、馨さんと泉さんも目が点になってる。
それに気付いた親父さんは、プイッと顔を反らせると、言いにくそうに呟いた。
「・・・そんな事、貴様に云われなくてもわかっとるわ。……何年コイツらを見てきたと思ってる」
「・・・はあ?」
ちょっと待て。何を云ってるのかわかんねぇ
俺達の納得できない顔に、お袋さんは眉尻を下げ困ったようにクスリと笑った。
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