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「そうだっ、先輩に謝んなきゃ!アタシ、先に行くわねっ」
「はぁい♪」
慌てて戻る馨さんの後から、ゆっくりと戻る。
思い掛けず二人きりになり、少し嬉しくなった。
「泉さん、あれで良かったのか?」
「ん~?何が?」
隣を歩く泉さんに訊ねるとキョトンと見上げた。
「親父さんの事。色々云われて辛かったんだろ?」
「ん~……いいんじゃない?大介おじさんの事、嫌いじゃないしね」
ふにゃっと笑った。
確かに『苦手』とは聞いたが『嫌い』とは云ってない。普通なら嫌いになるだろうに、泉さんは優しい。
「そうか。親父さんも泉さんの事が嫌いじゃないようだしな」
「えぇ~、そ~かなぁ……」
タクシーに乗り込む時、泉さんを見た親父さんの目は優しく微笑んでいた。
あれは嫌いな奴を見る目じゃない。
あんな人を"不器用な人"って云うんだろうな。マジでわかりずらいって!素直に成れないって面倒臭い性格だよなぁ。
「あぁ。保証する」
「そっか、ありがとう」
目を丸くした後、照れたようにふにゃぁ~と微笑む顔が可愛くて、泉さんの頭をポンポンと撫でたら更に嬉しそうに笑った。
・・・ヤバい・・・
無性に抱き締めたくなり無意識に腕を上げた……
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