【其の8】ポヤポヤ覚悟しろ

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「そうだっ、先輩に謝んなきゃ!アタシ、先に行くわねっ」 「はぁい♪」 慌てて戻る馨さんの後から、ゆっくりと戻る。 思い掛けず二人きりになり、少し嬉しくなった。 「泉さん、あれで良かったのか?」 「ん~?何が?」 隣を歩く泉さんに訊ねるとキョトンと見上げた。 「親父さんの事。色々云われて辛かったんだろ?」 「ん~……いいんじゃない?大介おじさんの事、嫌いじゃないしね」 ふにゃっと笑った。 確かに『苦手』とは聞いたが『嫌い』とは云ってない。普通なら嫌いになるだろうに、泉さんは優しい。 「そうか。親父さんも泉さんの事が嫌いじゃないようだしな」 「えぇ~、そ~かなぁ……」 タクシーに乗り込む時、泉さんを見た親父さんの目は優しく微笑んでいた。 あれは嫌いな奴を見る目じゃない。 あんな人を"不器用な人"って云うんだろうな。マジでわかりずらいって!素直に成れないって面倒臭い性格だよなぁ。 「あぁ。保証する」 「そっか、ありがとう」 目を丸くした後、照れたようにふにゃぁ~と微笑む顔が可愛くて、泉さんの頭をポンポンと撫でたら更に嬉しそうに笑った。 ・・・ヤバい・・・ 無性に抱き締めたくなり無意識に腕を上げた……
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