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「なんだ!宇美じゃねぇか。久しぶりだな。随分めかし込んでるけど何でここにい──うわっ」
「あーもぅッ!何やってんのよ、こんなずぶ濡れで!風邪引くわよッ!」
宇美は説教しながら、バックから取り出したタオルでワシャワシャと拭きまくる。
「やめろって、何すんだよ」
「じっとしててよ!
あのさ、正美って覚えてる?高校の時の。あの子こっちに住んでるんだけど、来月結婚するのよ。でね、これからみんなでお祝いするの」
ジタバタする俺にクスクス笑いながら、宇美がここにいる理由を教えてくれた。
「へぇ~、あの正美ちゃんがねぇ」
宇美とは正反対の大人しくて可愛らしい子。よく泊まりに来てたな。と懐かしくなった。
「……で?兄さんはどうなの。あの人とは」
遠慮がちに問う宇美に「誰だ?」と聞くと、嫌そうに「結希さん」と口を尖らす。
「あ~……お前、正月来なかったから知らねぇのか。とっくに別れたよ」
「ぶはっ。やっぱりか。ククッあの人、兄さんには合わなかったもん。良かったじゃん」
「お前が"良かった"んだろ」
俺は方眉を上げ、ニヤリと笑った宇美の額を小突くと、宇美は豪快に笑った。
「あははっ、ま~ね♪あ、もう行かなきゃ!今度ゆっくり聞かせてね♪」
相変わらず忙しねぇな。と走り去る後ろ姿を笑顔で見送り、泉さんに視線を戻した。
「えっ?!」
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