【其の2】和風カフェのポヤポヤ

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更衣室は畳が敷かれた3畳の部屋。 小さなテーブルにお盆を置くと、麦茶を持った茜が後から入ってくる。 「泉さん、麦茶でいいですか?」 「うん、ありがとぉ♪」 「今日はホント疲れました!」 「ん~?」 なんの事だろう?箸を止めずモグモグ頬張り、苛立つ茜をチラ見する。 「さっき帰ったおばさん達ですよっ!ムカつくっ!」 年配の女性4人で来店した客の事だ。 11時のopenと共に来て足湯の席を陣取り、注文したのは珈琲。 朝市で買ったらしき物を並べ品評会を始めた。 喋り声は大きく、品が無い。やれ『アソコのオバチャンは態度が悪かった』だの『もっと値切れば良かった』とか、非常にけたたましい。 しまいには試食会までし始めた。 それは外でやってくれ。 マナー違反にも程がある。"旅の恥はかき捨て"ていかないで欲しい。持ち帰れ。 それとも、このオバチャン達は普段からこんな風に傍若無人なのか。 年を取ると云うのは恥も外聞も置き去りにするものなのか。 何度か、他の客の迷惑になるからもう少し静かにしてくれと茜がお願いに行っても。 『あらやだ、煩かったわよね。御免なさいねぇ。ちょっとアンタ達、もぅちょっと静かにしなさいよ』 『お嬢ちゃん。コレ、食べてごらん。美味しいわよ』 『あ、そうそう。"茶そばセット"4つ持ってきて』 『ねぇ、旅館の仲居がさぁ~』 『うそっ!アハハハハ!』 謝罪らしきものは口先だけで、まったく変化が無かった。 この人達の旦那さんはこんな時、どんな風に制御するのか。 是非とも世のために伝授してほしいものだ。
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